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  • 骨盤臓器脱 日帰り手術

    骨盤臓器脱とは

    本来なら骨盤内にある臓器が下垂し、膣内外に落ちてきた状態を骨盤臓器脱と言います。主な骨盤臓器脱には、膀胱が脱出する膀胱脱(ぼうこうだつ)、子宮が脱出する子宮脱(しきゅうだつ)、直腸が脱出する直腸脱(ちょくちょうだつ)があります。
    人間は直立すると内臓の重量が骨盤にかかるような構造になっています。女性は分娩する際に赤ちゃんが通るための産道を有していますが、骨盤底筋群という筋肉やその周囲の靭帯が産道を塞ぐように存在し、内臓が下垂したり脱出したりしないように内臓を支持しています。また、骨盤底筋群は、直腸や尿道を締めることで貯留物が漏れないようにする役割も有しています。骨盤底筋群は、妊娠や出産の際に損傷したり引き伸ばされたりする可能性が高く、また加齢も損傷や緩みの原因になります。それら以外にも、肥満、重いものを頻繁に持ち上げること、頻繁な咳やくしゃみ、便秘しがちであることなどによっても骨盤底筋群に負担がかかり、損傷や緩みの原因になりかねません。
    もし骨盤底筋群に損傷や緩みが生じると、直腸、膀胱、子宮などの臓器を支えきれなくなり、そうすると臓器は下垂し、膣内に落ちて骨盤臓器脱が起きます。骨盤臓器脱が進行すると、最後には膣壁が反転し、直腸、膀胱、子宮などの臓器が膣から外に脱出することもあります。

    骨盤臓器脱の検査

    通常の婦人科内診を行います。その後、エコー、膀胱尿道内視鏡検査や排泄性腎盂造影検査などのレントゲン検査を行います。他に、膀胱の収縮機能や時間当たりの排尿量を調べる場合もあります。

    骨盤臓器脱の種類

    1.膀胱脱

    全体の60%くらいにあたり最も多い。ひどくなれば排尿困難、尿漏れ、頻尿など排尿にも影響を及ぼす。

    2.子宮脱

    膀胱脱の次に多い子宮脱の症状は、下腹部の違和感、下着に擦れることによる出血や痛み・痒みがあります。下着におりものが付着することから子宮脱がわかるケースもあります。

    3.直腸瘤

    膣から直腸が脱出した状態です。便意が増える、残便感があるなどの症状が現れます。便秘や排便障害を起こすケースも珍しくありません。直腸瘤のみの方は少ないです。

    4.小腸瘤

    子宮摘出後の方に多いです。子宮摘出したのに下がってきた方はこちらの可能性が高いです。

    骨盤臓器脱のステージ

    骨盤臓器脱の程度は、以下のステージに分類されます。

    ステージ0 症状なし
    ステージ1 立ち上がったり、いきんだ時にだけ膣内に臓器が降りてくる
    ステージ2 立ち上がると膣口まで臓器が降りてくる
    ステージ3 膣口の外まで臓器が降りてくる
    ステージ4 臓器が完全に膣の外に出ている

    治療では、骨盤底筋体操で改善を図る方法や、一時的な治療としてリング式ペッサリー治療もありますが、確実な効果を期待できるものではなく、完治には手術が必要です。

    骨盤臓器脱の日帰り手術

    TVM(Tension-free Vaginal Mesh)手術

    当院では骨盤臓器脱の根治を目的とするTVM手術を行っています。TVM手術では、メッシュを使って下垂した臓器を下支えするという手法を用いますが、本来であれば1週間程度入院して行う手術を当院では日帰りで行えます。本院での10年以上の実績がございます。メッシュは従来から鼠径ヘルニアなどの外科手術でも用いられ、既に安全性が確立された国産の手術用素材になります。具体的には、まず、支える対象の部分の膣壁を切開します。そして、膀胱脱であれば前膣部分で膣と膀胱、直腸脱であれば後膣部分で膣と直腸を分離し、人工メッシュを切開部に差し込みます。メッシュのアーム部分を閉鎖孔または靭帯に通してメッシュ全体を支えます。アームを引っ張るとハンモックのように臓器を吊り上げることができます。
    TVM手術は骨盤臓器脱治療を世界的にリードしているフランスで開発されました。この手法では、従来のような子宮摘出の必要はなく、再発率も非常に低く数%程度です。手術の際の傷跡が小さいため従来の手術より体力の回復が早くなり、治りもより綺麗です。また、排尿機能などに悪影響を与える合併症のリスクもかなり低下しています。メッシュ自体は何度も改良され、現在のメッシュは分解や吸収されることなく膣壁に同化して臓器を支持し続けます。メッシュの素材は感染やアレルギーが起こりにくいものが使用しています。

    サーミバー(Thermi-Va)

    骨盤臓器脱が軽度であれば、サーミバー(サーミVa)により膣の引き締めを行うことで症状を改善できると考えられます。サーミバーは、米国FDAの認可を受けた機器であるThermiRFを用いた高周波電磁波(高周波、ラジオ波、RFとも呼ばれる)による治療法です。高周波を照射することで、大陰唇、小陰唇、膣の締め付けが起こり、外観と機能面での若返りが期待できます。メカニズムとしては、高周波は線維芽細胞を活性化して、線維芽細胞によるコラーゲンの産生を増強します。高周波照射後3~4週間の間にコラーゲンは次第に増え、膣内部や膣周囲のコラーゲンの量が多くなることで引き締まる効果が生じるとされています。この効果は約半年維持されます。外陰部の引き締め効果は、ほとんどのケースで高周波照射直後から実感できます。
    サーミバーでは厳密な温度管理がされるため、非常に安全性が高くなっており、照射部分の表面は42~45℃、内部は45~50℃に加温され、快適な温かみを感じることができます。痛みや不快感は一切無く、腫れや内出血などもありませんので、ダウンタイムの心配もありません。具体的には、直径1㎝程度の棒状のチップを用いて高周波電磁波を照射します。所要時間は約30分間です。
    なお、サーミバーの治療は保険適用がないため、自費診療になるのがネックです。

    手術費用

    骨盤臓器脱の手術は健康保険の適用になります。

    項目 骨盤臓器脱の手術
    3割負担の場合 143,000円~
    1割負担の場合 44,000円~

    高額療養費制度

    高額療養費制度と呼ばれる医療保険制度があり、医療機関や薬局の窓口で支払う1月分の医療費が一定額を超えた場合、超過分が支給されます。骨盤臓器脱の手術も 、この高額療養費制度の対象として含まれています。

    民間保険の手術給付金について

    民間の保険会社の医療保険をかけておられる方は、骨盤臓器脱の手術に対して手術給付金を受け取れる可能性があります。手術を受ける前に、保険会社に確認されることをお勧めします。

    よくある質問(骨盤臓器脱)

    Q1. 骨盤臓器脱は手術後に再発することがありますか?
    再発の可能性はゼロではありません。加齢・肥満・慢性便秘・重い荷物の持ち上げ・長引く咳などが再発リスクとなります。術後は骨盤底筋トレーニングや生活習慣の見直しが予防に役立ちます。
    Q2. メッシュを使う手術と使わない手術、どう選べばいいですか?
    メッシュ(TVM等)は再発抑制に有利とされ、一方で自分の組織で修復する方法は若年者や感染リスクが高い方に適します。年齢・症状の程度・出産歴・既往手術などを踏まえ、診察で最適な方法を提案します。
    Q3. 出産後に起こりやすいですか?産後どのように過ごせばよい?
    経膣分娩を複数回経験した方はリスクが高いとされます。産後は無理をせず、回復期に体幹・骨盤底をゆるやかに鍛えることが予防に有用です。数か月経っても違和感が続く場合は受診をご検討ください。
    Q4. 性交渉への影響はありますか?いつ再開できますか?
    脱出があると違和感や痛みの原因になることがあります。手術で形状が整うと改善する方が多い一方、術後はおおむね約2から3か月の禁忌期間が目安です。乾燥感や狭さは保湿剤等で対応できる場合があります。
    Q5. 手術後に排尿しにくい・残尿・尿もれが増えることはありますか?
    一時的に排尿困難や残尿や尿もれがみられることがあります。多くは数日〜1週間程度で改善しますが、必要に応じて一時的な導尿などで安全に管理します。経過は個別に確認しますのでご安心ください。
    Q6. 高齢でも日帰り手術は可能ですか?
    年齢のみで一律に制限はしません。心肺機能など全身状態、歩行・通院の可否、ご家族のサポート体制を含め麻酔リスク評価を行い、日帰り可否を判断します。80歳以上の高齢の方でも適応となることがあります。
    Q7. 仕事や家事・運動はいつから再開できますか?
    軽い家事・デスクワークは翌日〜数日後から可能なことが多いです。5kg以上の重量物やランニング・テニス等の強い負荷は4週間程度控えるのが目安です。主治医の指示に従って段階的に再開してください。
    Q8. 再手術が必要になることはありますか?
    まれにメッシュの位置調整や露出や感染への対処など、追加手術が必要になることがあります。症状、診察所見、画像所見を総合して、最小限の侵襲で対応方針を検討します。定期フォローが大切です。当院では定期followさせていただいています。
    Q9. 骨盤臓器脱と尿失禁は関係しますか?
    関連します。膀胱や尿道の位置変化で尿道の締まりが弱くなり、骨盤臓器脱と尿失禁が併発することがあります。TVM手術後、改善される方もいらっしゃるため、当院では適応があれば、尿失禁手術(TOT手術)をTVM手術を受けた半年後に検討する場合があります。
    Q10. 手術を受けないとどうなりますか?受けるべきタイミングは?
    進行すると膣外へ出たまま戻らない、尿が出にくい・残尿増加、膀胱炎反復、排便困難、脱出部のびらんなどが問題になります。生活の質が下がる前に、症状の程度・生活影響・全身状態を踏まえ主治医と時期を相談しましょう。

    骨盤臓器脱でお悩みの方へ

    以前は、骨盤臓器脱はすべて「子宮脱」と呼ばれていました。しかし、現実的には膀胱が脱出する場合が約6割であることから、今では「骨盤臓器脱」と総称されています。子宮、直腸、膀胱などの臓器が脱出するかは、骨盤底筋の問題がある部分に対応します。妊娠や出産によって骨盤底筋にダメージを受ける女性には、骨盤臓器脱は馴染みのある病気です。欧米での調査から、経膣分娩を行った経産婦の約3割に骨盤臓器脱が起こると考えられており、欧米では骨盤臓器脱予防のための骨盤底筋のトレーニングが広く実施されています。
    命に直接関係しない疾患なので、年齢を理由に治療を諦める方も多いです。しかし、実際には、骨盤臓器脱になると、QOL (Quality of Life)が大きく低下する可能性がありますので、早めに治療を受けることが望ましいです。保存的治療では症状が改善されない場合も、当院では根治を目指す手術を日帰りで受けて頂くことができます。入院手術よりも社会復帰が早く、入院費がかからないことがメリットです。従来の骨盤臓器脱手術に比べて再発率が低く、安心できる手術です。当法人では尿失禁日帰り手術されているクリニックが少なく全国から受診されます。遠方にお住まいであれば、お電話、お問い合わせフォーム、公式LINE、オンライン診療で対応させて頂き、手術日時をご予約頂ければ、初診でも当日に手術を受けて頂けます。お気軽にご相談ください。